わんルーム!名犬ヘロッピ物語。その1(散歩)

私の名前は「ヘロッピ」と言う。ブルドッグとペギニーズの雑種で2歳になる雄犬である。

私が今のご主人にもらわれて来たのは生まれて間もないころである。

以来2dkのマンションでくらしている、ご主人は40歳にもなって独身で彼女もいないようである。

マンション暮らしにも慣れたが、ご主人がいない昼間はじつにたいくつである、それにつるつるすべる床は

いまだになれないのである。まるでスケートリンクではないか、何とかして欲しいといつも思うのであるが

ご主人はなんとも思っていないのである。

今日は土曜日でご主人は休みでまだ寝ている、そろそろ散歩に行く時間だが昨日呑みすぎたようで

まだ寝ているのである。平日は気まぐれで毎日散歩に連れて行ってくれないのでじつに気まぐれなおとこである

今起きてきた。「ヘロッピ飯食うたら散歩いこか」といってくれたので私は嬉しくなってシッポをふって飛びついた。

「へロッピ散歩にいこ」と言うのと同時に私はドアーの所に走ったがつるつるの床ですべってこけてしまった。

「アホ慌てるな、慌てるこじきはもらいがすくないいうてるやろ」と言われてしまった。

散歩のコースは大体決まっているが休みの日は少し違うので楽しみである。

いつもなら近くの川の土手を歩いて河川敷で終わりであるが、やすみの日は公園に行けるのである。

土手を歩いていると向こうから大きな犬を連れたおっさんがこちらへ歩いてきた。

おっさんは「おはよう」とご主人に挨拶をして私を見つめたがその顔は目が笑っていた。

そしておっさんが連れている犬までが私を見て笑うのである。

「おまえ不細工な犬やの、がりまたで鼻はぺちゃんこで足は短いしええとこないやないか」といわれてしまった。

腹がたってもんくを言おうと思ったが相手は私よりはるかにでかいシェパードでかぶりつかれたらおとろしいので

下を向いてしまった。

また向こうから今度はレトリバーを連れたオバハンがきた「おはようございます」と挨拶をして私を見つめた

オバハンの目は笑っているように見えた。気のせいかも知れないが「オレそんなに不細工やろか」と思ってしまう

のである。

「おまえいつみても不細工やの」とレトリバーにいわれてしまった。こいつも私よりはるかに大きいので聞こえない

ふりをしていたのである。

そして私がウンコをしていると向こうから今度は若い女の子が近づいてきた。

「可愛いいぬですね」といっているが明らかにお世辞に聞こえるのである。ご主人の方は若い美人に言われて

喜んでいるようであるが私は複雑である。

女性が連れているのはミニチュアダックスで雌犬であるがウンコをしているところ見られてしまったのはショック

であった。

「汚い雑種やわ臭い犬不細工な雑種!」といわれてしまった。今度は私より小さいので私も黙っていなっかった。

「やかましいのお前くそもオナラもせえへんのんか、短い足しやがってドアホ」といってやった。

すると「不細工な雑種のくせに生意気やわ」といって走っていた。

「お前にはいわれとないわえブスイヌ」といってやった。自分より弱いとわかるとなんでも言えるのである。




続く