防寒の効果はあまりなし……犬に「服」って必要なの?

防寒の効果はあまりなし……犬に「服」って必要なの?

 

寒い時期になると見かける機会が増える「犬の服」。寒さを防げて快適! に思えるのは人間だけで、犬にとって効果はビミョウなのはご存じでしょうか?

犬の体温は平熱でも38℃ほどと高いのに加え、からだには体温調節のための汗腺・エクリン腺がほとんどない暑がり体質、夏に服を着せると熱中症になる可能性が大幅にアップしキケンです。冬に着せても「耳」の温度が高くなるだけで、「おなか」はほとんど変化なし… 厳寒の地でない限り、服を着せても意味はなさそうです。

■オーバーヒートしやすい「犬」

「犬には汗腺(かんせん)がない」「犬は汗をかかない」と言われていますが、これは半分マチガエで、

 ・体温調整の汗 … エクリン腺(せん) … 足の裏や鼻の頭などに限定

 ・においの汗 … アポクリン腺 … 全身

から生まれた誤解。走り回ったあとにハァハァするのは舌や口からの気化熱によって体温を下げるためで、全身汗まみれになることはありません。汗っかきをコンプレックスに感じているひとにとってはうらやましい話でしょうが、同時に体温調整が苦手の意味でもあります。加えて犬の体温は37.5~39℃と高く、犬種によって差があるものの、全般的に「暑がり」な動物なのです。

服を着せて散歩させても大丈夫なのでしょうか? 11頭の成犬で調査したところ、

 ・夏 … 綿

 ・冬 … フリース

を着ると体温が上がりやすいことがわかりました。ただしこの体温は「おなか」ではなく「耳」の温度で、服を着せた状態で散歩をすると夏場は1℃近くも高くなってしまうのです。

これはコンクリートに寝そべってからだを冷やす時間にも比例し、散歩の距離が長くなるほど冷却を要するようになります。飲み水の量は冬の6倍にもなったというデータからもオーバーヒート気味なのは明らかで、夏の服は望ましくないという結果といえるでしょう。

■温まるのは「耳」だけ

冬はどうでしょうか? フリースと「服なし」を比べると耳の温度が1℃ほど高くなるというデータからも防寒効果があるのは確かですが、肝心の「おなか」の温度はほとんど変わらないという結果になり、つまりは人間が期待しているような効果はないことがわかったのです。

それでも犬に服を着せるのはナゼでしょうか? おもな理由は、

 ・抜け毛が舞わない

 ・毛にゴミがつかない

が多く、とくに春と秋に換毛(かんもう)期を迎える犬も多く、周囲に気をつかって着せるケースがあります。ただし、もともと寒さ対策のために毛で覆われているのですから、服で防寒する必要は皆無。息も凍るような厳寒の地でない限り「犬のため」にはならない、と考えるべきでしょう。

雪国では犬の足の裏にも毛が生える例が多く、地味ながらも自力で対応していることの証ですから、人間が心配する必要はなさそうです。むしろ夏場はキケンですので、愛犬の様子をみて決めたほうがよさそうです。

■まとめ

 ・犬は汗をかかない、はウソだが、温度調整は苦手

 ・犬に服を着せると、おなかよりも耳の温度が上がる

 ・もともと体温が高いので、夏に服を着せると熱中症の危険性あり

 ・冬も「おなか」の温度は変わらず、人間が期待するような効果はない

(関口 寿/ガリレオワークス)