中国からの外来種で国内最大級のセミ 埼玉県川口市で生息確認

埼玉県川口市の安行地区で、中国の外来種のセミ「プラティロミア・ピエリ」が生息していることが、埼玉大名誉教授の林正美氏(昆虫分類学)らの調査で分かった。林氏によると、日本で生息が確認されたのは初めて。どのように日本に入ってきたかは不明で、詳しい生態や侵入ルートなどの調査を進めている。

 和名は「タケオオツクツク」

 林氏によると、プラティロミア・ピエリは羽を閉じた状態の体長が約65ミリ。クマゼミと同等かそれ以上の大きさで、日本では最大級のセミだという。成虫は羽が透明で、暗緑褐色。中国の浙江省からベトナムに至る地域に広く分布するといい、中国での研究では卵のまま1年過ごし、幼虫は土の中で5年かけて成長してから成虫になるという。

 鳴き声に特徴があるツクツクボウシに近い種で、日本のセミとは違い、竹林にいることが多いという。そうした特徴から林氏らは和名を「タケオオツクツク」としている。

 調査チームは、林氏やNPO法人特定非営利活動法人)「埼玉県絶滅危惧動物種調査団」(埼玉県上尾市)の碓井徹代表ら13人。見たことのないセミの死骸が川口市で発見されたほか、異なる音程で「グィーーーン グィーーーン」と機械音のように鳴く聞き慣れない鳴き声が確認され、探してみたところ、28年8月に初めて生きた状態で発見された。

 天敵はスズメバチ

 調査チームは、同月から調査を開始。タケオオツクツクは日没前後の計約1時間半の間に鳴き、竹林の高所などにいるため発見が難しく調査はかなり難航したが、川口市さいたま市緑区などの10カ所で鳴き声や生息を確認した。羽化の途中でスズメバチに襲われるところも確認されており、天敵がいることも判明している。

 林氏は在来種や生態系への「影響についても調査しないといけない」と話している。

 川口だけ?

 調査チームは、タケオオツクツクが日本へ入ってきた経路、どのように定着、繁殖したのかなどについての特定作業を進めており、「(他の地域でも)気づかないだけで、川口だけでなく、どれほど分布が広がっているかが分かることを期待している」(林氏)と今年も調査をする方針だ。

 川口市緑課は「専門家が調査をしているので、連携しながら情報共有をして、対応が必要であれば対応する」としている。