大学生にもある発達障害。どのような支援が求められている?

発達障害とは、生まれつきの中枢神経系の機能障害が原因で、ものごとを認知する力やコミュニケーション、注意力などに偏りや問題が生じること。

長年、乳幼児や小学生などの問題として扱われてきたが、実は年齢を重ねても根本的な機能障害にはあまり変化がなく、治療も困難なため、最近では、乳幼児から大人まで、幅広い世代が抱える問題としてクローズアップされるようになってきた。

こうした流れを受けて、今、大学でも発達障害を抱えた学生の支援に向けた取り組みが始まっている。「大学に進学できる学力があるのに発達障害?」という疑問もあるかもしれないが、これは大きな誤解。

例えば、発達障害のためにコミュニケーションに困難があっても試験の成績は優秀といったケースは決して珍しくはないのだ。そのため、大学に進んでから困難にぶつかり、そこで初めて発達障害に気づくこともよくある。

発達障害に詳しい信州大学教育学部の高橋知音(ともね)教授はこう話す。

日本学生支援機構が2012年に発表した調査によると、大学が把握する発達障害の診断が出ている大学生は1000人以上。発達障害の学生がいる大学は全体の約4割に上ります。しかし、診断を受けていないケースも加えれば、人数ははるかに多いはず。ほぼすべての大学に発達障害を抱えた学生がいるだろうとみています」

では、現実にはどのような問題があり、大学はどのような対策を取っているのか?

「例えば、大学では課題に対して自分の考えをまとめるレポートや自分でテーマを決めて行う研究、さらにディスカッション、グループワークなどが多くなりますが、これらの場面で困難が生じるケースがあります。また、ちょっとした音に気を取られて授業に集中できない、自分で履修計画を立てられないなど、発達障害によって生じる問題は人によってさまざまです。

そのため、大学側も一律の対策は難しい。少なくとも、一人ひとりの問題を把握し、教員などと連携してサポートにあたる専門の支援担当者を配置することが必要です。一部の先進的な大学では取り組みが始まっていますが、全体的にはまだこれからといった段階ですね」(高橋教授)

入学試験、授業方法、成績評価などさまざまな面での支援が必要になるが、もう一つ重要なのが学生仲間の理解。

「例えば、運動音痴とかや歌が下手とか誰にでも苦手なことはありますよね。発達障害は、それがたまたまコミュニケーションなどの面に表れているに過ぎないのです。特別視するのではなく、まずは誰もがもっている個性の一つとして受け入れ、必要なときはさりげなく手を貸すという姿勢が大切です」(高橋教授)

高校でも、大学に進学しても、発達障害は実は身近な問題。仲間として理解・支援をするためにも、まずは知ることから始めてみよう。